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ACT |
H17.6月号 |
日本の精神医療も他科の医療と同様、入院中心から地域中心の支援へと変わってきています。今回のキーワードのACT(Assertive
Community Treatment:包括的地域生活支援プログラム)とは、既に欧米諸国で実践され成果をあげている、精神障害者を地域(生活の場)で支えるための新しいシステムです。その特徴は、今までであれば社会・医療から孤立してしまっていた精神障害者に対し、精神科医、看護師、精神保健福祉士、心理士、作業療法士などの専門職が専属のチームを組み、生活の支援や医療の提供を行います。
日本では、国立精神神経センターにおいて国のモデル事業としてACT-Jが実践・研究を行っています。岡山県においても、今年度より精神保健福祉センター内にACT-岡山チームを設置し、従来であれば入院を余儀なくされたであろう精神障害者を地域で支援していくシステムを構築することを目的に、実践を始めています。
このような公的機関での試みは、国内においても他に例がありません。この新たな取り組みに対する皆様のご理解、ご協力をよろしくお願いします。
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ACTアクセラレーター(Access to COVID-19 Tools Accelerator) |
R2.11月号 |
アクセラレーターは、英語でのアクセルペダルの別称であり、ACTアクセラレーターとはCOVID-19への対応を、加速させようという取り組みである。
国際共同メカニズム「ACTアクセラレーター」は、新型コロナウイルス感染症との戦いのため、グローバルファンドなども支援し、WHO主導で今年4月に発足した取り組みである。目標とすることは、診断・治療・ワクチン・ヘルスシステムコネクタの4分野であり、新しいツールの開発・生産・公平なアクセスを加速させるための共同の仕組みである。7月の会議では、向こう12か月間で313億㌦(約3兆3500億円)の資金が必要であり、現時点で34億㌦集まっている。
WHOは2021年末までにコロナワクチン20億回分の供給を目指している。すでに英国が最貧国に数億本のワクチンの購入資金の提供と日本が172億円の拠出を表明している。
ビル&メリンダ・ゲイツ財団 共同議長ビル・ゲイツ氏が日本経済新聞社に寄稿した「コロナワクチン途上国に」が9月30日の日本経済新聞に掲載された。その内容は、米ノースイースタン大学の研究として、各国の人口に応じたワクチンを配分した場合と、裕福な50カ国が真っ先に20億本を確保した場合の2つのシナリオを分析し、後者では4分の3の地域で4か月間ウイルスが拡大し、死者が2倍近くなると発表している。感染を終息させる唯一の方法は、世界中で同時に収束させることであり、そのため、最も喫緊な課題は貧困国と裕福な国のワクチンギャップを埋めることである。新型コロナワクチンが開発された場合、途上国に必要な量を配分することが先進国の感染収束につながると訴えている。
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Ai(死亡時画像病理診断) |
H21.11月号 |
患者の死亡後に画像検査を行うことは、Autopsy imaging(検死の画像検査)と呼ばれ、頭文字を取ってAi(エーアイ)と略され、海堂尊著『チームバチスタの栄光』で注目を浴びた。
日本では病理医の不足や遺体を傷つけることへの抵抗感から、剖検率が低く、欧米に比べ十分な死因究明が行われていない。人が亡くなった時、本当の死亡原因というのは、病気の経過や外見からでは意外とわからないものだという。
腎臓に針を刺して組織を採取する検査を受けた患者が、3日後に亡くなり「検査による事故」が疑われたが、遺族の同意を得て遺体のCT検査をしたところ、腎臓には異常がなく、頭がい内に出血が見つかり、病理解剖を頭部にも行ったところ、患者は偶然、くも膜下出血を起こし亡くなっていたことがわかったというような症例がある。
画像検査は、薬物で死亡しても画像には映らないなど多くの限界はあるが、①遺体を傷つけないため家族の抵抗感が少ない ②短時間で済み、家族は速やかに説明を受けることができる ③解剖が必要な患者や部位を絞り込むことができる、といった長所がある。
診断の適否や治療の効果、死因をはっきりさせるためにCT撮影などをして調べる取り組みは注目されている。家族にとっても、画像を基に納得のいく説明が受けられ、死に至る病態の研究によって治療法の開発へつながる期待もある。
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BLI(Better Life Index OECD) 「より良い暮らし指標」OECD |
H27.11月号 |
OECD34カ国と主要パートナーのブラジルとロシアが参加し、11項目の指標を定めた。より良い暮らしの基準については一人ひとり違ってはいるだろうが、富だけなのか、仕事と仕事以外の生活のバランスなどにも目を向けるべきなのか、幸福度を測ることが注目されている。多くの市民が参加し、知識や情報を基に、私たちの生活の方向を検討し、政策決定プロセスに関与できるようにすることがこのプロジェクトの狙いである。
スコアのもととなる11項目
- ①住宅:一人当たりの部屋の数、住居費、基本的衛生設備(例として、水洗トイレ)の整備率
- ②収入:家計可処分所得、家計金融資産
- ③雇用:就業率、長期(一年以上)失業率、平均年収、雇用保障
- ④共同体:困った時に頼れる親戚や友人がいると回答した人の割合
- ⑤教育:高校終了者の割合、教育を受ける平均的年数、義務教育修了時の読解力、数学的および科学的読み書き能力
- ⑥環境:大気汚染、水質
- ⑦ガバナンス:投票率、立法過程における協議プロセスの整備状況
- ⑧医療:平均寿命、自分の健康状態が良いや大変よいと回答した人の割合
- ⑨生活の満足度:生活の満足度の自己評価
- ⑩安全:人口当たりの殺人件数、過去12カ月に犯罪に巻き込まれた人の割合
- ⑪ワークライフバランス:長時間勤務者の割合、余暇や個人的活動にあてた時間
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BSC(バランスト・スコアカード) |
H17.8月号 |
「バランスト・スコアカード」は1990年ハーバードビジネススクールの管理会計担当教授 R.S.キャプラン氏、経営コンサルタントである D.P.ノートン氏が提唱した業績評価の枠組みです。最近では業績評価システムというより戦略マネジメントシステムとして注目をあびています。
BSCでは「財務」、「顧客」、「業務プロセス」、「学習と成長」の4つの視点(必ずしも4つでなくてもよい)から目標を設定し、その目標の達成度を測るための評価指標を明確にします。伝統的財務評価指標だけでなく広い範囲の非財務的評価指標をプラスすることで、顧客の満足度や従業員のやる気など評価の難しい無形資産の価値を明確化することによって、バランスよく目標が達成され、将来にわたっての業績向上が可能となります。
導入効果としては、
①組織全体の現状、課題の把握と戦略設定
②バランスの取れた経営判断と実行
③各部門間・各階層間での目標の共有化と推進
(組織内コミュニケーションの向上と動機づけ)
④計画の達成度の向上と中長期的成長
が挙げられます。
現在病院を取りまく医療環境は厳しく、公私を問わず経営改善が強く求められています。経営改善といえば、ダイレクトに財務的改善が前面に押し出されがちですが、経済的側面を強調するあまり、医療専門職の拒否反応が強く大きな壁にぶつかります。その点BSCは財務的視点以外の3つの視点を前面に押し出し、その因果関係や評価尺度を工夫すれば、病院においても各スタッフの理解は得やすく、戦略の実行が容易となります。
戦略は策定の失敗でなく実施段階での失敗が多くを占めます。BSCが病院経営において注目されているのはこの点にあるのです。ただ、すべてのビジネスツールの導入にいえることですが、トップマネジメントの強いリーダーシップなくしては成功の確率は低いことを記しておきます。
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CCP マトリックス(重症度を考慮した評価手法) |
H28.4月号 |
CCP(Comorbidity Complication Procedure)マトリックスとは、入院患者の重症度を客観的に評価する手法である。重症度や医療資源の必要度などを反映させながら、診断群分類を再分類するための新たな評価手法として、2016年度のDPC制度の見直しで試行される見通しである。
診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会での研究班報告によれば、たとえば、糖尿病の医療資源投入量に影響を及ぼしている項目として手術の有無、インスリン使用の有無、定義副傷病の有無(特定の合併症でこの場合は認知症、閉塞性動脈疾患、胃の悪性腫瘍、肝硬変、膝関節症、慢性腎不全)、年齢85歳以上などが挙げられる。これらの項目に加えて、臨床的類似性を勘案すると、糖尿病については96の包括支払いを5つの区分に再整理し、まとめることができる。
この5区分のそれぞれについて点数設定が行われるのがCCPマトリックスである。
今回の診療報酬改定では、糖尿病のほか、肺炎、心不全、脳血管障害、慢性関節リウマチ、先天性心疾患など診断群分類にこの手法が導入される見通しである。
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CCRC(Continuing Care Retirement Community) |
H27.9月号 |
CCRCとは、高齢者が元気なうちに新たなコミュニティへと移住し、介護が必要になっても持続してケアを受けながら暮らしていくこと。コミュニティには住居のみならず、クラブハウスやスポーツ施設、多世代との交流スペースなどを設け、居住者たちの有機的なコミュニケーションも大きな要素となる。
CCRCはアメリカで発展したスタイルであり、既にアメリカでは約2,000カ所に存在し、その居住者数は推定75万人。そこでは生涯学習や積極的な社会参加、多世代交流を通じ、自分たちの世界だけに閉じないコミュニティづくりが推進されている。
日本版CCRCの構想は、2014年12月27日に閣議決定した「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に基づくもの。2015年2月に「日本版CCRC構想有識者会議」が発足。会議は地方創生担当大臣の直下で開催され、発足以降、毎月議論を重ねている。内閣官房の「まち・ひと・しごと創生本部事務局」が実施したアンケートでは、全国で202の地方自治体が日本版CCRCに対して推進の意向を示している。地方における新たな人的交流・経済的効果も期待されている。
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CDR(チャイルド・デス・レビュー) |
R3.12月号 |
CDR(Child Death Review)は「予防のための子どもの死亡検証」で、子ども(18歳未満)の死亡に関する効果的な予防策を導き出すことを目的に、複数の関係機関・専門家(医療機関、警察、消防、その他の関係者)が、死亡した子どもの既往歴、家族背景、死亡に至った直接の原因等に関する情報を基に行う検証をいいます。
病気や虐待、事故のほか、死亡診断の時点で原因がはっきりしないものも含め、あらゆる子どもの死因を調査し、防げる死がなかったかを分析します。全国に先駆けて行われた滋賀県のモデル事業では、3分の1の死亡は防ぎ得たのではないかとされているそうです。
岡山市の保育園でも2歳児が10月に遊具に挟まれて意識がない状態で発見された事例がありました。調査は子どもを失った遺族にとってつらい経験を思い出させることになると思いますが、新たな子どもの死を予防することにつながると考えれば、グリーフケアの一つになるかもしれません。添い寝や添い乳はいけないと言われたりしますが、スキンシップを否定するよりも赤ちゃんの呼吸が苦しくなったらアラームで知らせるようなモニターの開発も防止策になるのではないでしょうか。
参考資料: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000123792_00001.html
チャイルド・デス・レビュー(Child Death Review)に関する資料2021/10/20
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CFS(慢性疲労症候群) Chronic Fatigue Syndrome |
H23.10月号 |
原因不明の強度の疲労が6ヶ月以上の長期間に渡って続き、日常生活に支障をきたすほどになってしまう病気である。完治することは稀であり、医師の間でもCFSの認識は薄く、専門医でなければこの病気の可能性を見出せなかったり、的確に診断できない場合がある。また精神疾患等に誤診される場合があり、患者は多くの病院を訪れ長年の後、CFSの診断を受けることが多い。
具体的な症状としては、多くは風邪やインフルエンザの症状と似ており、全身の倦怠感・微熱・頭痛・脱力感や思考力の障害・抑うつ等の精神神経症状などが起こる。全国で22~38万人もの患者がいると推計されている。
CFSの実態を描いたアメリカのドキュメンタリー映画「アイリメンバーミー」は、製作・監督したキム・スナイダー自身がCFSの患者である。ある日突然に病に襲われ、原因も治療法も不明な病気CFSと診断されたキム監督が、同じように苦悩する全米各地の患者や医師たちを訪ね歩き、ミステリーじみた発症と病気の歴史、病気と患者に対する社会的偏見、政府や医師会などの不可解なサボタージュと、でたらめな報告書などを明らかにした。
今年1月27日、CFSで苦しむ患者に朗報がもたらされた。衆議院本会議の代表質問への答弁で菅首相(当時)がCFSの支援に言及したのだ。ここ数年は、CFSの研究が進んだこと、各メディアが取り上げるようになったことなどによって、CFSの今後の認知は深まると考えられる。
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CHO(Chief Health Officer=健康管理最高責任者) |
H31.1月号 |
CHOとは、組織が従業員の健康増進に向けて取組むための最高責任者のことです。近年、従業員の健康状態を経営課題の一つと捉え、マネジメントしていく「健康経営」が注目されていることを背景に、健康管理のプロフェッショナルを経営トップの一人として迎え入れる事例が増えています。健康経営の取組みは組織によって異なりますが、CHOはそれらの取組みを統括する役割を担います。
インターネットサービス等を手掛ける大手の会社では、代表取締役会長がCHOを担っています。2016年1月に社員の健康をサポートする専門部署であるCHO室を、代表取締役会長直轄の部署として設立。食事・運動・睡眠にまつわるセミナーや健康への取組みに関する情報発信を行っています。経営層がCHOを名乗ることで、健康経営実践への本気度がうかがえる事例です。
CHOのポジションを取り入れている組織は、まだ多くはありません。しかし、健康経営はその名の通り「経営」の一環。影響力やスピード感をもって社内の健康増進を加速させる存在として、今後さらにCHOに対する期待は高まっていきそうです。
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Choosing Wisely(賢明な選択) |
H30.10月号 |
Choosing Wisely(チュージング・ワイズリー)は、米国内科専門医機構(American Board of Internal Medicine:ABIM)財団が2012年に始めたキャンペーンで、「根拠が乏しいにもかかわらず実施されている過剰な医療行為をEBM (科学的な裏づけ)の観点から見直す」という活動である。
医療者と患者が、対話を通じて、
・EBMがあり
・すでに行われた医療とは重ならず
・害が少なく
・患者にとって真に必要な
医療(検査、治療、処置)の“賢明な選択”をめざす国際的なキャンペーン活動である。
医学会はもとより、一般市民にもわかりやすく公開し、医療提供者と市民の間で相互に考え、過剰診療を減らそうといういわば‘草の根活動’である。現在は80の専門医学会が参加し、約500項目のリストが公開されるまでになっている。
日本でもChoosing Wisely Japan が2016年に立ち上がり、抗菌薬の適正な使用や、健康で無症状の人々にPET-CT検査によるがん検診プログラムを推奨しないなどを広めている。
医療の無駄や有害事象を減らす努力が必要であり、このキャンペーンは医療者と患者との会話を促し、より適切な医療環境を作り上げるための行動目標となっていく。
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COPD「タバコ病」 |
H20.8月号 |
COPDは、慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)と呼ばれ、日本には500万人以上のCOPD患者がいると推定されている。
COPDは、タバコなどの有害な空気を吸い込むことによって、空気の通り道である気道(気管支)や、酸素の交換を行う肺(肺胞)などに障害が生じる病気である。その結果、空気の出し入れがうまくいかなくなるので、通常の呼吸ができなくなる。
代表的な症状は、息切れである。特に体を動かしたとき、例えば階段を上り下りするときや坂道を上るときに気づく。また、同年代の人と一緒に歩いていて、他の人より歩くペースが遅れてしまう、といったこともみられる。また、しつこく続く咳と痰や、風邪を引いたときや運動をしたときの喘鳴(ぜいぜいする)も、COPDの症状である。病気が進むと、口すぼめ呼吸やビヤ樽状の胸部がみられることがある。
長期間にわたる喫煙習慣が主な原因であることから、COPDは「タバコ病」「肺の生活習慣病」などといわれ、社会的にも注目を浴びている。アメリカでは1991年から死因の4位となっている。日本でも2007年人口動態統計によれば死因の10位、男性は7位になっている。高齢化と喫煙人口の増加により今後20年間で最も増加する病気の1つであり、2020年には死因の3~5位に上昇するだろうといわれている。
それでも、あなたはまだタバコを吸い続けますか。
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