アウトソーシング |
H17.4・5月合併号 |
アウトソーシングとは、組織内で行われていた業務の一部を外部企業に委託し、外部の機能や資源を活用することによって経営効率を高め、体質強化を図る経営手法である。つまり、戦略的に内部に残す部分と外部に出せる部分の切り分けを行い、自分のところは必須な中核業務に特化しようという考え方である。
病院の場合一般的に医療の中核業務である医師、看護師の専門的業務、ならびにコメディカル及び経営管理の中核業務以外はすべてアウトソーシングの対象となりうる。
アウトソーシングの目的としては、(1)コスト削減、(2)人件費等の変動費化、(3)設備投資の削減、(4)人材の確保、(5)企業の持つ専門ノウハウや機能の活用などが考えられ、一方懸念される点としては、
(1)品質が低い、特に最初は良いがだんだん満足できなくなる、(2)コストの低下が不充分、(3)院内の管理の意向に従わない、(4)管理者が変わり管理の質が下がる、(5)機密保持、(6)病院の現従事者の配置転換などが予想される。
アウトソーシングの成功の鍵は、まず発注に際し比較見積りによるコストだけを基準に選択するのでなく、目的を明確にし、専門性も含めて病院として中長期的メリットが得られるか十分見極めることが大切である。
さらに発注して後も、たえず病院側の関心と要望を伝えることにより発注元病院の理念・目標が共有されるようになれば、信頼感も深まり、病院業務遂行上なくてはならないパートナーとなるであろう。そして病院は安心して戦略的医療中核業務に専念し、すばらしい病院にむけて発展を続けることが可能となるわけである。これこそアウトソーシングの最大の成果である。
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アサーション |
H21.5月号 |
アサーション(assertion)は、コミュニケーションスキルでは「(さわやかな)自己表現」という意味で使われ、看護分野で特に注目されている言葉です。
「相手に気兼ねして、言いたいことが言えない」「引き受ければ自分が大変になるのはわかっているのに引き受けてしまって、相手を恨んだり、自分を情けなく思ったりする」このようなことはないでしょうか。相手の言い分が不当だと感じても、自己主張できず、相手の要求にいやいや従ったり、また、逆に自分の意見を相手に押し通そうとして、攻撃的な言い合いになったりすることはありませんか。
アサーションは、自分の感じていることや考えていることを誠実に率直に伝えていく方法です。相手のことも配慮しつつ、自分の気持ちや考えを相手に伝え、自分も相手も大切にするやり方が、アサーティブな方法と言われています。
お互いが率直な意見を出し合えば、相手の意見に賛同できないことも出てくるでしょう。そのときに、攻撃的に相手を打ち負かしたり、非主張的に相手に合わせたりするのではなく、お互いが歩み寄って一番いい妥協点を探ることがアサーティブなあり方であると言えます。
上手に自己表現ができれば、医療の現場でもコミュニケーションがうまく取れるようになり、ストレスも軽減されるのではないでしょうか。
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アディポネクチン |
H25.10月号 |
医学的に証明された、スーパーダイエット脂肪燃焼ホルモン「アディポネクチン」は、内臓脂肪細胞で作られる善玉物質で、動脈硬化を抑制するなど我々の健康維持に非常に重要な役割を果たしている。しかし、アディポネクチンは、内臓脂肪の増加に伴って分泌が低下するため、内臓脂肪の多い人は、心筋梗塞や脳卒中、冠動脈疾患等の病気、健康阻害状態になりやすい。
アディポネクチンを強化することによって、糖尿病・高血圧・脳卒中・心筋梗塞の予防や、抗癌作用、高脂血症の改善、コレステロール抑制、アンチエイジング、血栓の予防などの効果が期待できる。
アディポネクチンの注目すべきところは、内臓の脂肪燃焼作用だ。先ごろ、東京大学の研究チームが、運動時と同様の効果を体内で起こさせる機能があることを研究発表した。運動しても痩せないなどの悩みのある方は、このアディポネクチンを強化・増強することをお勧めする。
アディポネクチンを強化・増強するには、大豆・青魚に含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)が最も効果的といわれている。
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アドバンス・ケア・プランニング(ACP) |
H30.3月号 |
アドバンス・ケア・プランニングとは、患者の意思決定能力が低下した場合に備え、主に終末期における医療やケアについて、患者の価値観や人生の目標、医療・ケアに対する希望などを尊重し、どのように行うのか、あるいは行わないのかを患者・家族と医療従事者などが事前に話し合って決めておくことをいう。以下(ACP)
エンディングノートと違い、ACPでは、書面にするかどうかは重要視されておらず、患者が意思決定を行うまでの関係者との対話のプロセスに意味があると捉える。医療従事者や家族らが話し合いを通して、患者の意思の背後にどのような価値観や人生観があるのかを理解することが、患者の思いや人生に寄り添った医療・ケアの実現につながると考えられる。
ACPの実施にあたっては、一度意思決定をしたあとに患者の病態や環境、考え方が変わることも想定されるため、定期的な医療・ケア方針の確認と見直しを継続していくことが求められる。
すでにACPが普及している欧米では、「患者の自己コントロール感が高まる」「医師とのコミュニケーションが改善する」「医療に対する患者・家族の満足度が向上する」などの導入効果が認められている。一方「自分の終末期について考えたくない人にとっては苦痛」「話し合いのプロセスを経るために手間と時間がかかる」といった課題も挙げられている。
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アドボカシー |
H16.4月号 |
聞きなれない概念だと思いますが、意味としては、一般的に権利擁護、代弁などとして使われ、障害者、高齢者、少数民族等権利を奪われた人の権利を擁護していく活動を総称しています。
方法としては、相談を受けることから始まり、権利を回復するため交渉や政策提言する事も含んだ概念です。
1960年代にアメリカで公民権運動等の市民による権利運動として台頭し、日本においてはまだ普及しているとはいえませんが、患者会や市民グループ等の団体で取り組まれつつあり、比較的知られているオンブズマンも広義にはその一つといえます。
医療分野では例えば、インフォームド・コンセントの過程で、何らかの状況で権利を奪われた患者が、主体的に自己決定できるように権利擁護する、簡単にいうと患者の味方になる事がその活動だといえます。患者が権利を奪われた場合の行動は様々ですが、その一つに苦情があり、ここでのアドボカシーは、患者の味方として苦情に対しての問題解決を援助する事です。
当院では、この考えのもとに2001年4月より国内では先駆的に患者アドボカシー室を設置し、筆者はソーシャルワークの一分野として患者の立場に立った苦情相談を担当しています。
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アプリシエイティブ・インクワイアリー |
R7.1月号 |
アプリシエイティブ・インクワイアリー(Appreciative Inquiry, 略してAI)は米国で提唱された人材開発や組織活性化のアプローチの一つです。
組織や個人の「強み」や「成功体験」に焦点を当て、探求し、認め、それを生かして未来志向の変革を促進するプロセスを指します。従来の問題解決型アプローチとは異なり、問題の原因追及ではなく、ポジティブな面に目を向ける点が特徴です。
関係者全員が対話を通じて協働する参加型アプローチで、「何がうまくいっているか」「成功の要因は何か」を探求していきます。そしてその過去の成功を基に「理想的な未来」を構築するための行動を計画し、共通の目標や未来像を描いていきます。
AIは一般的に「5Dプロセス」として進められます。
Define(定義)対話の焦点を明確化する
Discover(発見)過去の成功や強みを探り、ポジティブな要因を洗い出す。
Dream(夢)理想の未来像を描き、共有する。
Design(設計)理想を実現するための仕組みや計画を共同で設計する。
Destiny(運命/実行)行動計画を実行し、継続的な学びと改善を図る。
AIは、ポジティブに課題を解決することを目的としているため、自分だけでなく同僚の長所を見出し、伸ばすことで、お互いが認め合えるようになります。 その結果、協力的な人間関係が構築でき、団結力を高めながら仕事ができる点が大きなメリットです。
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アラフォー世代 |
H25.1月号 |
アラフォーとは、around40(アラウンドフォーティー)の略で35歳から44歳を指している。
今や、団塊の世代は60歳から65歳となり、定年を過ぎて組織の主力から離れてしまった。
次に人口が多いのは、彼らの子供たちである団塊ジュニア、すなわちアラフォー世代である。
そういえば、2012年のゴルフ界では43歳の藤田寛之が初めての賞金王になり、最優秀選手賞など5冠に輝いている。石川遼、松山英樹、池田勇太などの若い世代を制しての王者である。
わたしたちの組織においても、アラフォー世代に期待することはたくさんあり、彼らの成長が求められている。
現在、医療界を取り巻く環境では、2025年問題と称し、超高齢社会に対し医療、介護等社会保障の懸案をかかえている。高齢者数は、過去に類のない多さとなり、社会保障給付費の総額は144兆円に達するとされている。
当然、社会補償予算がシーリングを受けると、全国の医療機関は直接打撃を受けることとなる。
そのときには、アラフォー世代が知恵と勇気を出してこの難関を乗り越えて超高齢社会を支えていかなければならない。
そのためには、今こそ組織をあげてアラフォー世代に対し教養を施し育成するときではないだろうか。
アラフォー世代、この世代がこれからの主役となってくる。
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アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs) |
H22.4月号 |
「未だ満たされていない医療ニーズ、未だ有効な治療方法がない医療ニーズ」を意味し、欧米で医薬品開発時などによく使われる慣用句である。時代とともに、社会における疾病構造は変化し、求められる医薬品の種類も変わる。
いままでは、感染症治療薬の需要が主流だったのが、現在では、生活習慣病、がん、老人病、精神障害に対する「治療・改善・QOL向上」を目的とする医薬品の需要が増えてきている。死亡率の高い疾患の死亡率を下げる薬、治癒率の低い疾患の治癒率を上げる薬が求められる。具体例としては、がん、AIDS、アルツハイマー症、MRSAの予防薬・治療薬などである。
また、EDや不眠症、禁煙、抜け毛、頭痛など、直接生命に支障は無いものの、生活の満足度を向上させる「生活改善薬」の需要も増えている。水虫が完治する治療薬、食事療法のいらない糖尿病治療薬などがある。
普通の人が「こんな薬があったらいいのに」と思うような薬、医療機器、治療法を開発すればいいということらしい。医薬品ではないが、砂糖の代わりのノンシュガーのように、塩の代わりになるノンソルトが発明されると、高血圧の方も美味しい減塩食が食べられるようになるのではないだろうか。
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イクボス |
H29.6月号 |
男性の従業員や部下の育児参加に理解のある経営者や上司のこと。子育てに積極的に関わる男性を「イクメン」と呼ぶのに倣い、そのイクメンを職場で支援するために、部下の育児休業取得を促すなど、仕事と育児を両立しやすい環境の整備に努めるリーダーを「イクボス」と呼ぶ。(対象は男性管理職に限らず、女性管理職も含む)
イクボスは、長時間労働で家事や育児をできない父親らが多い社会を変えようと、東京のNPO法人「ファザーリング・ジャパン」が2014年に提唱。
今では、「イクボス」を増やす取り組みが企業や自治体で広がり、全国で200社以上が「イクボス宣言」をしている。
部下の仕事と生活の両立を考え、その人のキャリア・人生、組織としての業績といった多様な要素を考慮し、自らも仕事と私生活を楽しむことができる上司としての意識改革により、職場を活性化し、成果につなげる狙いがある。
現代の人手不足を背景に、優秀な人材の確保や人材活用に向け、組織の働き方の見直しや業務改善の取り組みが迫られている。
職員が楽しく働ければ、仕事でのトラブルも減り、組織のパフォーマンスが上がるが、ただ、厳しさを失うとなれ合いになってしまう。そのバランスが難しい。
管理者の方はネットの「イクボス10か条」の確認、「イクボス検定」のトライから始めてみよう。
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イノベーション25 |
H19.5月号 |
イノベーション(innovation)の語源は、ラテン語のinnovare(新たにする)in(内部へ)novare(変化させる)とされている。
日本語では、よく技術革新や経営革新、あるいは単に革新、刷新などと言い換えられているが、イノベーションとは、これまでのモノ、仕組みなどに対して、まったく新しい技術や考え方を取り入れて新たな価値を生み出し、社会的に大きな変化を起こすことを指す。
「イノベーション25」とは、安倍政権の所信表明演説に盛り込まれた公約の一つで、2025年までを視野に入れた成長に貢献するイノベーションの創造のための長期的戦略指針のことである。
具体的には「走れば走るほど空気をきれいにする自動車」「カプセル1錠で寝ながら健康診断」「自動翻訳ヘッドホンで言葉の壁が解消」「土砂・洪水水害予測で被害の劇的減少」などが考えられている。
政府の「イノベーション25戦略会議」では、今後20年間に取り組むべき具体的施策を時系列にまとめたロードマップを作成。経済財政諮問会議でまとめる骨太方針に盛り込むとともに、平成20年度から具体的な施策に反映させるとしている。
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医療ADR |
H21.4月号 |
医療ADR(Alternative Dispute Resolution)とは裁判外紛争解決手続きと訳され、医療事故の際における患者・家族と病院との対立に対し、裁判による解決ではなく、当事者同士の対話を通しての解決を目指す仕組みのことである。弁護士会や民間組織、院内の多様な方式があり、裁判より解決が早く、信頼回復に役立つと導入が期待されている。
医療事故をめぐる民事訴訟の数は年々増加している。裁判では対立構造を前提としているため、両当事者が対決的に攻撃と防御を尽くすことになり、その結果、真の解決に辿り着けないこともある。医療事故が起こった際、患者・家族側と医療側のニーズは実は一致していることが大半だと言われている。
① 相手と向き合って話がしたい
② 臨床経過を明らかにしたい
③ 再発を防ぎたい
④ 適正な賠償金額の提示
などが挙げられるが、裁判の中では解決できないニーズもある。医療ADRは、これらの項目を求められる機能(役割)としているが、まず患者・家族側、医療側双方のニーズに視点を置き、解決策を検討していくことが必要となる。
医療事故をめぐり、患者・家族と医療スタッフの対話はなかなか成立しにくい状況にある。そのような状況下で、向かい合い、いかに対話の中で解決を導いていくか、「医療の架け橋」として対話を仲介していく院内医療メディエーター(医療対話促進者)と言われる存在も注目されるところである。
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医療・介護総合確保推進法 |
H27.1月号 |
高齢化が進行する中で、社会保障制度を将来も維持していくために、医療・介護提供体制の構築や医療・介護を対象とした新たな財制支援制度の確立、地域包括ケアシステムの構築などを行い、地域における医療と介護の総合的な確保を推進する。
概要は以下のとおり。
- 新たな基金の創設と医療・介護の連携強化(地域介護施設整備促進法等関係H26年6月以降)
病床の機能分化・連携、在宅医療の推進・介護サービスの拡充、医療従事者などの確保・育成の事業計画を都道府県が作成し、消費税増収分を活用した新たな基金で実施される。
- 地域における効率的かつ効果的な医療提供体制の確保(医療法関係H26年10月以降)
病床機能報告制度を活用し、地域の医療提供体制のめざすべき姿を示す地域医療構想の策定。医師確保支援を行う地域医療支援センターの機能が位置付けられた。
- 地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化(介護保険法関係H27年4月以降)
在宅医療・介護連携の推進などの充実とあわせ、全国一律の予防給付を地域支援事業に移行し多様化を図る。特養は、中重度の要介護者を支える機能に特化される。一定以上の所得者は、自己負担割合を2割へ引き上げる見直しが行われる。
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医療観光(メディカルツーリズム) |
H21.12月号 |
「医療観光」とは健康診断や手術など治療目的での滞在と、一般的な観光をセットにした海外旅行のことである。
国々を行きかう旅行者には様々な目的があるが、近年注目されているのが「医療観光」である。特にシンガポール、タイ、韓国など太平洋アジア地域では国を挙げての旅行誘致が行われ、安い費用で高度な医療が受けられるとして人気となっている。
遅ればせながら、日本では今年7月に観光庁が「第1回インバウンド医療観光に関する研究会」を立ち上げ、外国人観光客の増加を図るため、日本の先進医療を目玉とした「医療観光」を本格導入する取り組みを始めている。
「医療観光」には、質の高い医療を安価で提供できること、ホテル並みの接遇、外国に向けての宣伝活動、そして何より専門的な用語の理解を始め、各国の文化や宗教、習慣に通じたレベルの高いスキルを必要とする医療通訳士の育成、確保が課題となる。
日本は高い医療技術がありながら、「医療観光」への理解や認知の遅れ、設備、態勢の不備、海外へのPR不足から積極的に取り組む病院が少ないようだが、千葉県の亀田メディカルセンターのように、JCI(国際評価基準の認証)を取得し、外国人の患者を受け入れる態勢を整えている医療機関もある。
国内では課題の多い「医療観光」であるが、今後ますます需要が見込まれることから、国際市場の開拓は、医療の活性化、医療先進国としての存在感を示すことのみならず、サービス業を始め、様々な産業の活性化に繋がる可能性がある。
羽田空港のハブ化もさることながら、日本をアジアの「医療観光」の拠点となるべく、政府レベルの計画、支援を期待したいところである。
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医療コンシェルジュ |
H20.11月号 |
「コンシェルジュ」とはフランス語で、ホテルなどにおいて客の要望に応じて観光の手配や案内などを行うスタッフのことをいい、転じて特定の分野や地域情報などを紹介・案内する人をもいう。
「医療コンシェルジュ」の役割は、患者のエージェント(代理人)として最適医療機関の選定やセカンドオピニオン的なアドバイスを行い、また病院内のガイドをするなど、待ち時間の短縮や効率的な受診を実現するものである。
コンシェルジュサービスは、患者にとってのメリットだけでなく、医療機関や医師にとっても負荷の軽減をもたらし、経営の効率化が図れるという効果が期待されるので、さらにサービスレベルの高い病院としての評価につながる。
最近でこそ医療はサービス業であり、接遇の大切さが重要視されるようになったが、なかなか、本当に患者の側に立った対応は難しいものである。県内で実際、「コンシェルジュ」と名付けた職制を設けている病院も見受けられるようになり、また、受付スタッフも、受け身の受付から積極的に声をかけるフロアコンシェルジュ的に変わってきている。
全国的には、本格的に医療コンシェルジュの養成も行われるようになっており、患者にとっても、医療機関、医療従事者にとってもよい、潤滑油のような存在に成長発展していくことを期待する。
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医療におけるVRとAR |
H31.2月号 |
エンターテインメント業界やIT業界において、VR(Virtual Reality;仮想現実)は様々な場面で実用化されています。本来あり得ない空間をつくり出し、自分があたかもその場にいるかのような世界を体感することができるこの技術が、急速に進化を遂げてきました。最近では、娯楽施設のアトラクションに限らず、自ら機器を購入して自宅でVRに触れ、楽しんでいる人も増えているようです。
2018年12月8日、一般社団法人22世紀先端医療情報機構により、インターネット接続されたVR空間上で、大腸癌の専門医による学術会議が行われました。北海道、千葉県、静岡県の各地から、VR空間に投影される動画や画像を含む資料をもとに、議論が交わされました。VRの技術は遠隔診療の場で応用されようとしていますが、移動時間をかけず有意義なカンファレンスが行われたことは大きな成果といえるでしょう。
さて、VRに対し、AR(Augmented Reality;拡張現実)というものも現実味を帯びてきています。現実の世界に、VRを用いた情報を掛け合わせる技術です。たとえば、実際には遠隔地でロボットを操作しているのにもかかわらず、患者はあたかも自分のそばで執刀医が身体に触れながら手術してくれているような感覚を味わうことも、もはや夢ではなくなるかもしれません。数年前のポケモンGOブームもさることながら、
医療の世界においても、ARの恩恵にあずかる日が近づいているのではないでしょうか。
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医療法人制度の見直しに関する改正 |
H29.5月号 |
医療法人の経営の透明性の確保に関する改正について、厚生労働省は28年度上半期(4月~9月)を想定し、省令等改正の準備を進めていく方針。また、地域医療連携推進法人に関しては、平成29年度から施行の見込み。主な改正点は以下のとおりです。
1. 医療法人経営の透明性の確保
- ① 一定規模以上の医療法人に会計基準の適用を義務付けるとともに、公認会計士等による外部監査を義務付ける。
- ② 一定規模以上の医療法人に、計算書類の広告(官報又はインターネット上での公開)を義務付ける。
- ③ 医療法人とМS法人を含む関係当事者との関係の透明化・適正化が、必要かつ重要との観点から、毎年度、医療法人とМS法人との関係を都道府県知事に報告させる。
2. 医療法人のガバナンスの強化
- ① 医療法人の役員の選任及び解任に関して、社員総会の秩序を乱す者の退場、解任された理事の損害賠償請求を認めるなど、社員総会において、厳格な運営を求める規定が設けられた。
- ② 医療法人の理事長の権限及び理事の監事への報告義務が新設された。
- ③ 医療法人の理事会の位置づけ及びその職務について規定され、また、役員等の損害賠償責任についても新たに定められた。
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インシビリティ(Incivility) |
R6.9月号 |
「インシビリティ(Incivility)」とは、礼儀や尊重を欠いた行動や言動を指します。例えば、無視する、話を遮る、皮肉的なコメントをする、感謝を表さない等の攻撃性は高くないものの不快感を与える言動を指します。職場でのインシビリティは直接的なハラスメントやいじめと比べ、表面化されず問題提起されづらいため見過ごされがちです。しかし、積み重なることで職場環境や従業員に悪影響を及ぼし、モチベーションや生産性の低下、離職を招きます。(インシビリティに当たる行為を受けた人のうち20%近くが退職したという研究もあります)
昨今、ハラスメントへの意識は高まってきました。2020年にはパワハラ防止法が適用され、2022年には中小企業にも防止措置が義務付けられました。一方、「ハラスメント未満」とも言えるようなインシビリティは認知度の低さからあまり問題視されておらず、グレーゾーンとなっている状態です。
行為者の意図が曖昧であることがインシビリティの特徴。そのため、行為者は「傷つける意図はなかった」「自覚なくやっている」ということがあります。また、インシビリティに当たる行為を受けた人も、他者に対してインシビリティをはたらく傾向があるといいます。「自分も同じような振る舞いをしても許されるだろう」とインシビリティを繰り返し、職場環境の悪化や退職者が出る、という負のスパイラルに陥ってしまうのです。
インシビリティに当たる行為の一つひとつは些細なことと見過ごされがちですが、その影響は決して軽視できるものではありません。健全な職場環境をつくるため、ハラスメントと同様、企業は対策を講じる必要があります。
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インフォデミック(Infodemic) |
R2.12月号 |
インフォデミック(Infodemic)とはインフォメーション(Information:情報)とエピデミック(Epidemic:流行性、伝染)を掛け合わせた造語で、2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行した際に一部の専門家の間で使用された言葉です。インフォデミックは、「情報の伝染」と訳すことができ、大量の情報が溢れ、混乱が生じる現象を指します。
言葉自体は比較的新しいものですが、流言飛語による社会の混乱はインターネットのない時代、古くは古代ローマ時代から観測されており、現象自体は新しいものではありません。
しかし、現代ではインターネットやSNSによって情報そのものの伝わる速度、範囲が大きく異なっており、ささいな情報から重大な情報までが瞬時に拡散されるようになりました。
感染症の流行や自然災害の発生時などに、正しい情報も不確かな情報も大量にインターネット上を行き交うことで、私たちは正しい情報を得にくい状況が生まれてしまいます。
今回の新型コロナの流行でも、2020年2月2日のWHOのレポートで「インフォデミック」というキーワードが使われ、信頼できる情報を伝達するルート構築の重要性が説かれたにもかかわらず、有効な対策が見つからないまま、新型コロナのパンデミックよりも先に世界的なインフォデミックが引き起こされることになりました。
誰もが気軽に発信者として情報をシェアできる時代だからこそ、膨大な情報に踊らされず、信頼できる機関やメディアを自分の考えで選び、事実を見極める重要性は高まってきています。
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ウィキペディア ( Wikipedia ) |
H22.6月号 |
今インターネットを開き、知りたいことや調べたいことを入力するとたちどころに答えてくれていますが、誰がどのように管理し、提供してくれているかを考えたことはありますか。しかも費用はかかっていません。それを実現してくれているサービスの一つがウィキペディアです。 2001年1月に英語版が始まり、現在までに272言語版が開設され、グーグルやヤフーなどについで世界で5番目に利用者の多いサイトに成長している。 広告は一切掲載せず、利用者の寄付によって、米カリフォルニア州にある非営利団体ウィキメディア財団が運営している。 しばしば信頼性が問題視されるが、投稿者は必ず記述の出展を明記するルールになっている。 運用については、投稿など編集作業は誰でもできる一方、ページの「削除」や編集を止める「保護」など特別な権限を持つ管理者がいる。 管理者への立候補の条件は、投稿者として50回以上の編集実績などハードルは高くない。管理者はボランティアで、ネットの信任投票で選ばれる。日本語版は65万ページあり、63人の管理者がいる。管理者の悩みは、他言語に比べ2割程度と人数が少なく、適切なスピードで適切に管理が出来ないことなどである。
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ウィークタイズ(weakties) |
H22.10月号 |
ウィークタイズとはストロングタイズ(strongties)に対する概念で、文字通り人と人との「弱い人間関係」「弱い絆」のことである。米国の社会学者M・グラノヴェター著書の『転職 ネットワークとキャリアの研究』の中で「接触頻度が高い人々(強い人間関係)よりも、低い人々(弱い人間関係)からの方が転職に際して有益な情報を得やすい」とした説が提唱されている。「ties」はネクタイを指す。
「強い人間関係」とは、地縁、血縁、職場などの定まった範囲で互いに縛られているような関係であり、ウィークタイズ「弱い人間関係」とは、たまにしか会わないけれど、ある程度の信頼を維持しつつ付き合っている友人、知人との関係のことを言う。
「弱い人間関係」こそ強いとは、相反する言葉のようであるが、「強い人間関係」では、共有する情報が似通ったものになりがちであり、関係を維持する為に膠着した状態が続くため、違った考え方や価値観、可能性などの発見がしづらくなる。それに比べ、ウィークタイズ「弱い人間関係」の、より自由な繋がりの中では、新しいものの見方、未知の情報などを得やすいと言われている。
「ウィークタイズ」は昨今、就職・転職などに限らずプライベートにも良い影響を与え、思いがけない気づきや、新しい可能性を知るなど、視野や価値観を広げ自分を成長させる機会として、また、企業・自治体などでは成長戦略の一つとして注目されるようになっている。
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ウィズ・エイジング |
H22.12月号 |
「老化は悪、と決め付けていませんか。診断技術の進化と研究の蓄積で、常識を覆すような老化の真実も見えてきました。これからはウィズ・エイジングの時代。病的な老化を防ぎ、病的な若返りもやめて、健康で幸せな老いを手に入れましょう。」と発信されているのが、今年4月、杏林大学教授(高齢医学)から愛知県大府市の国立長寿医療研究センター病院長に就任された鳥羽研二先生です。
ウィズ・エイジングという考え方について、鳥羽先生のお考えを「間違いだらけのアンチエイジング朝日新書」から頂きました。 『どんな老化現象にもそっと寄り添い、生活上の不自由をなるべく生じないよう知恵を絞る。たとえ認知症や寝たきりになっても、排泄や食事がなるべく自然に近い状態で出来るよう配慮することで、その人らしさを保つ工夫をする。
死の際に、額のしわに、言葉にならないその方の人生を実感する。
そうした老いを、価値あるものとして、学問的に取り扱っていきたいと思っています。こうした願いを込めて、老いと素直に向き合う生き方を「ウイズ・エイジング」という言葉にしました。「ウイズ」は「ともに」「いっしょに」といった意味の言葉です。老化現象をむやみに嫌ったり落胆したりせず、かといって目を背けもしない考え方です。』
例えば、経口では吸収されないとわかっているコラーゲン入りの食品やサプリメントを盛んに宣伝していますが、
医療関係者や製薬関係者にも、アンチエイジングに悪乗りし、利益を得ているやからが見受けられ、鳥羽先生は「正確な情報を発信し啓蒙することが大事ではないでしょうか。」とも呼びかけておられる。我々も、ウイズ・エイジングの考え方で、長い老後を楽しんでみてはいかがでしょうか。
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ウェルビーイング(well-being) |
R5.1月号 |
ウェルビーイングは、健康、幸福、福祉などに直訳されます。企業のあり方や個人のワークライフバランスが見直される中、これからの時代の中心的な考え方として注目されています。
「健康」は、狭い意味での心身の健康のみを指すのではなく、感情として幸せを感じたり、社会的に良好な状態を維持していることなど、全てが満たされている広い意味での「健康」である、と解釈できます。
人は5つの要素を満たしていると幸せである、とされています。頭文字をとって「PERMA」と呼ばれています。
- Positive Emotion(ポジティブな感情)
- Engagement(何かへの没頭)
- Relationship(人との良い関係)
- Meaning and Purpose(人生の意義や目的)
- Achievement/ Accomplish(達成)
ウェルビーイングが注目されている政治的・社会的な背景として
・「モノ」から「心の豊かさ」へと価値観が変化している
・働き方改革により、働き方の多様化が進んでいる
・健康管理を経営的な視点でとらえ、従業員への健康投資が生産力の向上につながる
・新型コロナウイルス感染拡大によってリモートワークが普及し、自分らしい働き方を考え直す人が増加している
ウェルビーイングが経営にもたらすメリットとして
・生産性の向上・人材の確保・企業価値の向上・良いコミュニケーション環境をつくる
・健康増進・労働環境の見直し・ヴィジョンの共有
などが挙げられています。
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エイジテック(AgeTech) |
R5.8月号 |
日本を筆頭に、ほとんどの先進諸国で進行している少子高齢化。そんな中で世界的に市場規模が拡大しているのが「エイジテック(AgeTech)」です。年齢(Age)とテクノロジー(Technology)を掛け合わせた造語で、高齢者が日常生活で抱える悩みや課題を解決するテクノロジーや概念を意味します。
エイジテックの市場規模はグローバルで約300兆円近くあるといわれ、サービスの種類も多様です。たとえば、身体的負担あるいは交通の不便さなどで病院に行きづらい高齢者に対するオンライン診療、転倒や徘徊防止のための見守りセンサーなど介護者のサポートとなるサービスも含まれます。世界的な企業はすでにエイジテックの取り組みを始めており、AppleならApple Watchを用いた健康管理プログラムの提供、Amazonなら音声アシスタントAlexaを用いた遠隔介護サポートなどがあります。
エイジテックが注目される理由は、少子高齢化の大きな2つの課題である“高齢化によって起こる医療コストの増加”と“少子高齢化に伴う介護者不足”の解決に繋がると期待されているからです。特に2040年に超高齢社会のピークを迎えるとされ人材不足が確定している日本では、介護や医療における課題を人間の力だけでなくテクノロジーの力でいかに解決していくかが鍵となります。今後、エイジテックに関する開発や導入が進み、高齢者はもちろん医療福祉に携わる人々を支えてくれるよう期待したいです。
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エキマトペ |
R4.10月号 |
オノマトペとは、トントン、パタパタ、ニコニコなど自然界の音・声、物事の状態や動きなどを表した言葉である。特に、駅で聞こえる音やアナウンスを文字で表現したものを「エキマトペ」というそうだ。電車の発着の音、ホームに流れるアナウンスを文字にしてホームに設置されたモニターに表示するエキマトペの実証実験が、JR上野駅などで始まったという。駅ホームの音として特徴的な「ビュウウウン」「プシュ~」や「ピンポンパン、お知らせします…」というような文字が、漫画の擬音表現や吹き出しのように文字の形や揺れを使って雰囲気が伝わるように工夫している。視覚に障害がある人をはじめ、駅を利用する多くの利用者に共通の体験を提供している。
駅のバリアフリーの工夫は、多くの駅ホームにエレベータが設置され、車いすを利用する障がい者や高齢者などにとって便利になった。点字や点字ブロックは昔からあるが、ホームドアの設置も次第に進んでおり、安全に利用できる工夫が進んでいる。
病院の玄関等にも、ディスプレイモニターを設置し、案内や多言語表示を始めているところがある。様々な工夫を凝らして、バリアフリーを進めることが期待される。
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エスタブリッシュ医薬品(establish:確立された) |
H30.11月号 |
エスタブリッシュ医薬品とは、特許が切れた処方薬のうち、医療現場で長期にわたって広く使われている薬。
エスタブリッシュ医薬品の特長は、効果や安全性の評価が確立されて安心感があり、かつ特許切れのため安価であること。処方薬に求められる「効果」「安全性」「安価」の3つの条件を満たしている。
処方薬は、特許に守られて開発メーカーが独占的に製造販売できる「新薬」(先発薬)と新薬として登場してから長期間経過し、特許が切れた後も使われ続ける「長期収載品:エスタブリッシュ医薬品」・新薬の特許切れ後に別の会社が製造・販売する「ジェネリック(後発薬)」の3区分がある薬。
エスタブリッシュ医薬品には、薬効成分の信頼性だけでなく、安定供給や品質管理などの面でも新薬と同等の厳しい基準が適用されている。すでに医療現場では、「安心できる使いなれた薬」という信頼感を得て多くの使用実績がある。また、薬の形状(剤形)や表面を覆うコーティング・容器・包装なども工夫され、味がよく、飲みやすさを向上させた薬や、常温保存が可能になるような改良がされた薬も作られている。
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オミクロン株(新型コロナウイルスの変異株) |
R4.1月号 |
オミクロン株は新型コロナウイルスの変異株である。
新型コロナウイルスは2019年12月に中国で初めて報告され、現在まで全世界での感染者数は2億6千7百万人以上に拡がっている。(日本経済新聞:2021年12月9日午後4時現在、出所は米ジョンズ・ホプキンス大)
新型コロナウイルスなどのウイルスは、増殖や流行を繰り返す中で遺伝子配列を少しずつ変異させており、新型コロナウイルスは約2週間で1か所程度の速さで変異を繰り返している。
そのうち感染性が高まったり、ワクチンの効果を弱めたり、また、その可能性がある株を「懸念される変異株(VOC)」と「注目すべき変異株(VOI)」として警戒の対象としている。
大阪大学の忽那(くつな)堅志先生などは、「VOCとしては、イギリスで検体が初めて検出されたアルファ(α)株、次に南アフリカでのベータ(β)株、ブラジルでのガンマ(γ)株、インドでのデルタ(δ)株があり、オミクロン(ο)株は最も新しいVOCの変異株であり、南アフリカで2021年11月11日に初めて検出された」「オミクロン株の症例が報告されている国は世界的に増え続けており、2021年12月3日時点でオミクロン株の症例が確認された国や地域は日本を含め36か国になっている」「オミクロン株についての特徴的なことは不明な点がまだ多いようだが、デルタ株に比べ実行再生産数の増加は2.2倍といわれるほどで懸念されている」「オミクロン株が出現したとしても、私たちにできる感染対策は変わらず、手洗いや3つの密を避ける、マスクを着用するなどの感染対策をこれまで通りしっかり続けること」などと言われている。
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オレンジプラン |
H24.11月号 |
認知症を患った高齢者でも、できる限り住み慣れた地域で暮らし続けられる在宅中心の認知症施策へシフトすることを目指し、厚生労働省が9月に打ち立てたのが「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」である。
地域での医療や介護、見守りなどの日常生活支援サービスを包括的に提供する体制づくりを目指した具体的な方策である。
計画の主な内容は「認知症ケアパス」の作成、普及させること。認知症の早期診断、早期対応を目指すこと。地域での生活を支える医療サービス、介護サービスの構築を行うこと。地域での日常生活・家族の支援を強化すること。若年性認知症施策を強化すること。医療・介護サービスを担う人材の育成を行うことである。
そのための具体的な計画として、かかりつけ医認知症対応力向上研修の実施。「認知症の薬物治療に関するガイドライン」の策定。認知症地域支援推進員及び認知症サポーターの増員などが挙げられている。
これら全てを平成25年度から平成29年度までの5年間で行う計画である。
なぜ「オレンジ」なのかというと、「認知症サポーター」が認知症を支援する目印として付けているブレスレットがオレンジリングといわれるところからのようだ。認知症サポーターとは、厚生労働省が認知症について正しい知識の普及と認知症になっても地域で住み続けられるようにとの目的で、地域住民を養成する講座「認知症サポーター養成講座」を受講した人である。
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