平成21年度 県外病院合同見学


医療法人森近会
 近森病院  
〔病院概要〕
所在地  高知市大川筋1-1-16
理事長・院長  近森 正幸 氏
病床数  338床
診療科目  内科・外科・循環器科等、17科
平均在院日数  15.04日
病床稼働率  99.4%

  
 近森病院は、JR高知駅の駅前市街地に位置し、急性期医療を中心に高齢社会の中でまさに地域に求められる医療を目指しいる病院である。緊急入院で確たる実績を有する急性期の「近森病院」を核として、同じ市街区画の中にある関連施設は、脳卒中・頚損対象の回復期リハビリ病院「近森リハビリテーション病院」(180床)、精神科専門の急性期病院「第二分院」(104床)と精神障害者在宅サポート「高知メンタルリハビリテーションセンター」からなる「総合診療センター近森」、整形外科専門のリハビリ病院「近森オルソリハビリテーション病院」(100床)がある。また、昨年4月からは障害者の社会復帰・就労支援「高知ハビリテーリングセンター」もグループに加わっている。グループの理事長でもある近森院長の説明によると、これらの計722床をケアミックス型の大病院としてではなく、急性期と回復期では自から異なる各々の診療の独自性を尊重し、グループの各病院がまさに隣り合った状態で有機的に連携し「救急からリハビリテーション・在宅ケア」までの一貫した「高齢社会の中でのトータル医療」を目指しているとのこと。


 
      ▲タッチパネル式
「かかりつけ医紹介」の検索機と
  連携先医療機関が記されたボード
  ▲近森先生みずからNSTの回診




 今回の近藤院長先生の説明の副題は「病院機能とスタッフ機能の絞込み、コストの削減」。中でも「医療スタッフの機能の絞込み」は人的生産性等の向上に深く関わることであり、昨年の今頃までメーカーに勤務していた小職としては興味深く拝聴した。マンパワーを増やしても、徹底したチーム医療による良質で効率的な医療により評判を良くし患者数を増加させ、結果として相対的コストで優位性を確保する。このためには医師、看護師、コメディカルがスルーに連携していくチーム医療を可能にする、官僚制とは対極にある組織風土作りが不可欠である。トヨタや京セラのような他業種のノウハウを自家薬籠中のものとし、この実現に向けて不断の努力を行っている様子が、近森院長の説明からもうかがえた。
 「近森病院のNST(栄養サポートチーム)」も興味深かった。重症低栄養患者に対して行ってきたマンパワー不足の「もちよりパーティー方式」での「治療型」NSTから、多数精鋭の専門性の高い管理栄養士を中心とした多職種による本格的チーム医療で対応する「メインコースディナー方式」の「予防型」NSTへの移行である。予防や管理で患者の病態を良くし、全体の医療コスト低減を目指す。グループ全体として急性期から在宅までのケアサイクルを俯瞰している近森院長の強いリーダーシップがあってのものだと思う。



 病院見学では、病棟に配属されているコメディカルの皆さんの活き活きとした様子に感銘を受けた。聴診器を携帯している管理栄養士さんの姿は、まさにチーム医療の体現化と受け止めた。総合案内では死亡率などの診療実績が患者によく理解できるような形で掲示されており、「見える化」に努めている。また、受付には連携先の医療機関がプロットされた大きな地図のディスプレイがあった。脇に備え付けられたタッチパネル式の検索画面で患者自らが「かかりつけ先生の紹介カード」を検索・選択、このカードをベースに逆紹介が進められる。患者参画型のひとつのパターンとして興味深かった。
 精神科の第二分院や隣接の近森オルソリハビリテーション病院も見学し、視覚的にも大いに学べ有意義な三時間であった。

 (倉敷中央病院 事務長 富田秀男)