平成19年度 県外病院合同見学

 福井県済生会病院
〔病院概要〕
福井県済生会病院全景
所在地 福井県福井市
和田中町
開 設 昭和16年8月
病院長 三浦 將司 氏
病床数 466床
職員数 1,010名
診療科目 21科
外来患者数 1,284名/日
平均在院
日   数
12.3日
病床稼働率 90%
紹介率 50.2%
逆紹介率 70%
  
 平成19年7月19日(木)、我々一行は予定時間より少し早く福井県済生会病院に到着した。少し早めの到着にも係わらず、平日の忙しい中、院長を中心に、副院長、事務長、看護部長(副院長)などに歓迎頂き、立派な会議室へ案内された。見学会は、概要説明、質疑応答、施設見学(人数が多かったため2班に分かれて)という構成で行われた。
 
 <概要説明・質疑応答>
 福井県済生会病院は、「患者さんの立場で考える」を理念とし、病院機能評価(Ver.4)の認定やISO9001の取得など、常に時代や社会の変化に対応し、患者さんのニーズに応えた質の高い医療の提供に努めている。さらに、地域医療支援病院の認定や開放型病床の設置による病診連携の積極的推進、健診センターの充実などにも取り組み、地域の急性期病院または基幹病院としてこの地域の保健・医療の中核を担っている。
 三浦院長の説明によると、福井県済生会病院は①救急医療、②がん治療、③予防医学を3本柱として質の高い医療を目指しているとのことであった。
 
 この病院ではいくつか斬新的な取り組みを行っている。現在では全国的に広がりつつある看護部長の副院長化をいち早く取り入れたり、また平成13年7月から新たな試みとして、病院説明専門職という位置づけで「メディカルコーディネーター」4名(看護師3名、事務1名)を、院長より認定証を交付する形で配置している。彼女達専用の部屋を設け、患者のクレーム対応、フォローアップ、各所へのフィードバックなど、仕事の領域を模索しながら日々鋭意努力しているとのことであった。最初は院内でも、その存在をなかなか認められなかったという苦労もあったようだ。
外来待ち合い 診療科入口 わかりやすい表示
 
 病院としての今年度のテーマは『働きがいのある職場づくり』で、その中でも今一番力を入れていることは、どこの病院でも同じことが言えるであろうが「職員満足度の向上、つまりモチベーションをあげること」。
 そのための方策の一つとして取り入れているのが有志チームによる「ワークアウト」である。職員各自に“自分が役に立っているという自覚”を持ってもらうため、医局が威張るのではなく、フラットな組織を目指しているという。ワークアウトでテーマを設定することにより、病院の方向性を全職員にアピールでき、全職員が同じ方向に向かって仕事ができる環境を整えている。
 また院内に「感謝箱」を設置し、対応が良かったなどの職員に対して気がついた人が投書を行い、投書が多く集まった職員に対しては、リッツカールトンホテルへ招待するなどの優遇措置をとる。このようにモチベーションの高い職員のベンチマークを行っている。
 さらに働きやすい環境を整えるため、24時間保育所を月額2万円で利用できたり、給与面で7:1看護配置に対する手当をつけたり、一週間のリフレッシュ休暇を新設したりしている。
 
 この病院の大きな特色の一つと言えるのが、地域連携が充実かつ円滑に運営できているということである。代表例としては、翌日に見学した「福岡内科クリニック」と実に円滑な病診連携が図れていた。
 平成5年に1名で始めた地域連携室には、現在10名が配置されている。逆紹介に関しては、ワークアウトを利用して、職員から経営陣へ提案を行いながら進めていった結果、逆紹介率70%(平成18年度)という数字に繋がったという。また逆紹介を進めていったことによって地域の開業医との信頼関係が構築され、逆に紹介患者が増える傾向にあるという。逆紹介を推進していく前は一日平均約1,000名であった外来患者数が、約1,200名に増加したということだった。月に約1,200名の紹介患者がある中の約半分(平成18年度で50.2%)が連携室を通した人とのことである。また病床稼働率97%(平成18年度)という数字からもわかるように、実にうまく地域連携の仕組みが構築されていることが窺える。我々も多いに見習うべきところである。
 
 最後の質疑応答の中で、参加者の一人から福井県済生会病院の昨年度の総収入、その人件費率についてなどいくつか突っ込んだ質問も飛び出したが、三浦院長、田中事務部長は快く回答してくださった。それによると、総収入は平成18年度で140億円、人件費率は47%ほどということだった。
 
 
 <施設見学>
 会議室での説明の後、2班に分かれて施設見学を行った。とても印象に残っているのが、患者さんが利用しやすい外来づくりをされていることだった。新しい病院の例にもれず院内各所の表示は大きく、工夫されていたり、患者さんのプライバシー保護についてなど、参考になる点がたくさんあった。各診療科の入口はまるで映画館のそれようであった。そのほか平成17年5月に新設された「女性診療センター」には女性専用の診療科を集められており、ここでもプライバシーの保護に気を配られていた。
 健診センターも新しく、宿泊用の施設などはホテル並に綺麗で、温泉、アロマテラピー(別料金)も利用可能となっていた。失礼な言い方かもしれないが、周りを田圃に囲まれているにもかかわらず、屋上緑化にも取り組まれていた。
 
女性診療センター 検診センター

 見学終了後、バスに乗り込み病院を後にする私たちを、院長を中心にいつまでも丁寧に手を振りながら見送ってくださった職員の方々の姿には感動した。こういう気配り、心遣いからも「地域から愛されている病院」である片鱗が窺えた一瞬だった。
 
 私は今回初めて県外病院合同見学に参加させていただいたが、他県の病院、そこで働いている方々とお会いし、見、聞くことで、日々の業務に埋没しそうになっている感性を蘇らせ、活性化することができることを実感した。参加者全員が大変有意義な見学会になったことだと思われる。
 
 
 (津山中央病院  企画・管理部  美甘 一)